理学療法士(PT)という職業は、患者さん一人ひとりの健康回復を支える、医療現場において欠かせない存在です。
それにもかかわらず、SNSなどで一部から「理学療法士は負け組」との声を耳にすることがあります。
自分の仕事が、負け組とか言われるとショックだよね
理学療法士は勝ち組と言われるのは気持ちいいものですが、理学療法士はオワコンや負け組と言われると気分も悪く不安になるもの…。
そこで本記事では理学療法士として15年働いてきた筆者が、なぜそのようなレッテルを貼られるのかを解説していきます。
現場で感じるリアルな声と共に、「負け組」と呼ばれることの背景にある真実を探ります。
理学療法士は負け組と言われる理由
国家資格でもある理学療法士が、なぜ“負け組”と揶揄されるのでしょうか?
その主な理由は下記 点が挙げられます。
給料の安さ(昇給のしにくさ)
理学療法士が負け組とレッテルを貼られる最大の原因は、給料の安さおよび昇給のしにくいさです。
理学療法士の平均給与:約418.9万円(平均年齢33.9歳)。
日本の給与所得者全体の平均年収:436.4万円(平均年齢46.7歳)。
厚生労働省『令和2年 賃金構造基本統計調査(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)』(e-Stat)
厚労省のデータが示すように、理学療法士の年収は日本の平均年収よりも低いのが実情です。
国家資格でありながら、日本の平均より低い給料であり、負け組と揶揄されています。
国家資格&医療職なのに、平均より給料が安いなんて…
また下記のデータは、理学療法士と日本全体の年代別の平均年収を示したものです。
年代別の年収比較
年齢 | 理学療法士 | 全労働者 |
---|---|---|
20〜24歳 | 329万円 | 320万円 |
25〜29歳 | 380万円 | 360万円 |
30〜34歳 | 414万円 | 409万円 |
35〜39歳 | 437万円 | 457万円 |
40〜44歳 | 487万円 | 494万円 |
45〜49歳 | 516万円 | 520万円 |
50〜54歳 | 539万円 | 557万円 |
55〜59歳 | 575万円 | 581万円 |
理学療法士は新卒の頃はまだ給料は一般より高いものの、年を追うごとに平均以下になっていきます。
つまり昇給が少ないということ…。
昇給が年間1,000円とう職場もザラだよ
以上のように日本全体の平均よりも安い給料と、昇給の少なさから負け組のレッテルを貼られています。
理学療法士の給料問題は、下記の記事でくわしく紹介しています。
理学療法士が飽和に近い
ここ20年ほどは毎年1万人以上の理学療法士が誕生していて、累計で21万人が有資格者となっています。
毎年多くの理学療法士が誕生していることで、飽和状態に近いと危惧されています。
厚労省のデータでは、早くて2026年にリハビリが必要な患者さんに対して理学療法士(および作業療法士)によるリハビリ供給が過多になると予想されています。
さらに2040年にはリハビリの需要に対して供給量が1.5倍になる予想もあり、明らかな飽和状態を向かえるとされています。
理学療法士が飽和すれば、就職・転職先の減少や給料の低下、最悪リストラの可能性が考えられます。
こうした理学療法士の増えすぎ問題も、負け組とレッテルを貼られている要因です。
将来性が不透明(むしろ厳しい)
理学療法士の売り上げの大元は、国の予算(国民の税金)から出ています。
少子高齢化、そしてゆくゆくは人口減少が予想される日本において予算が減少するのは明らか。
そうなれば診療報酬は引き下げられ、理学療法士の売り上げも減り、結果として給料の削減という流れは容易に想像できます。
これまでもマイナスの改定が多かったし、この流れは続きそうだね
合わせて前述の通り理学療法士の飽和は近く厳しい未来が来るには間違いと言えます。
今後は理学療法士の資格を持っていても働き場所がなく、別の仕事に就くという人も増えるかも…。
こういった将来性の不透明さ(むしろ厳しい)も、負け組と揶揄される一因です。
やりがい搾取がある
多くの理学療法士は真面目で優しい人が多く、「患者さんのために!」と時には自己犠牲をしながら頑張る傾向にあります。
そんな理学療法士のやりがいに頼り、適切な給料を支払わなかったり、残業は認めないって職場は意外と多いです。
医療現場ってお金の話をするのがタブーで、搾取されやすい傾向にあるね
やりがい搾取の傾向にある点も、理学療法士は負け組とレッテルを貼られる要因です。
ブラックな職場も多い
理学療法士の生活と成長を考えてくれる素晴らしい職場もたくさんありますが、なかにはブラックな職場も…。
- 給料が平均より大幅なに安い
- サービス残業が当たり前
- 有給をなかなか取らせてもらえない
- 指導という名のパワハラが横行
- 毎年、退職者がいる
上記のようなブラックな職場は意外とあります…。
医療現場という閉鎖的かつなかなか意見が言いにくい環境下では、ブラックな職場も多く負け組と揶揄される一因となっています。
ブラックな環境で心身を病む人もいるしね…
理学療法士のブラック職場については、こちらの記事でくわしく解説しています。
結局、理学療法士は負け組?15年目PTの見解
前述の通り理学療法士が負け組とレッテルを貼られたり、揶揄される理由を紹介しました。
では、本当に理学療法士は負け組なのか気になりますよね?
15年間、理学療法士として様々な分野で働いてきた経験を元に結論を言うと、理学療法士は決して負け組ではないと考えています。
そう言える理由は以下の3点です。
それぞれ解説していきます。
やりがいはかなり高い
理学療法士という仕事の最大の魅力は、やはり“やりがいの高さ”でしょう。
患者さんと文字通り“二人三脚”で地道に努力を重ね、そして症状が改善し退院できたり、スポーツへ復帰でき笑顔を見られた時の喜びは他の何ものにも代え難いです。
- リハビリのお陰で良くなった
- 〇〇さんがいたから頑張れた
- 本当に感謝している
上記のような言葉を患者さんから掛けられると、めちゃくちゃ嬉しいものです。
他のどの職種よりも患者さんと関わる時間が長い分、頼られることは多くとてもやりがいのある仕事です。
仕事はお金だけじゃなく、やりがいも重視しないとつまらなくなるよ
もちろんやりがい搾取されるような状況はダメですが、
頑張り次第で給料を上げやすい
前述の通り理学療法士の給料が低いというのは、悲しいながら下記の表の通り事実です。
給料の比較
理学療法士 | 全労働者 | |
---|---|---|
平均年収 | 約426万円 | 約461万円 |
年収の中央値 | 約380万円 | 約433万円 |
とは言えこれはあくまで平均であって、平均年収よりさらに上の年収500万円以上稼ぐ理学療法士は数多くいます。
PTは他の職種に比べ、週末や勤務後に自費分野で稼ぐことができますし、そのスキルを活かし企業への就職も可能で活躍できる場所が多いです。
そのため全体の給料は世間一般の平均よりも安いですが、個人の頑張り次第で給料を上げやすいため決して負け組とは言えません。
頑張れば給料に反映されやすいのは理学療法士の強みだよ
理学療法士が年収を大幅アップさせる方法は下記の記事で紹介しているので、参考にしてみてください。
転職しやすい
理学療法士を含め医療業界は、転職しやすい分野といえます。
例えば大手の転職サイト「PTOT人材バンク」で理学療法士の求人をチェックしても1.5万件以上の求人があるので、転職しやすいのは明らか。
またいわゆる“出戻り”にも寛容な業界であり、自費分野や他の職場を経験してから、元の職場に戻りやすく働き方を調整しやすいのはメリットと言えます。
そのため転職によって給料アップを狙えたり、働き方を調整しやすい特徴があります。
潰しが効きやすいのもメリットだよ
理学療法士が負け組と言われないために気を付けること
理学療法士として働く人にとって、リハビリはとてもやりがい・価値のある素敵な仕事ということはわかりきっていること。
ですが、自分達の評価と世間の評価にズレが生じやすいというのも事実。
そこで世間から「理学療法士は負け組」と言われないために気を付けるべきことは以下の通りです。
- 専門性を高め価値を提供する
- 人的資本に投資し給料を上げる
ただなんとなくマッサージをして、電気治療をして、歩行練習をして時間を過ごし単位を稼ぐというのではなく、知識・技術を高め変化を提供することが重要です。
「やっぱりリハビリって大切!凄い!」と感じてもらうことこそが、我々PTの存在価値を高める唯一の方法で、その積み重ねによってPTという仕事の評価が高まっていきます。
そのためには勉強であったり、常に人的資本を高める努力が大切
特に最近ではオンラインセミナーが便利で、なかでもリハノメはいつでもどこでも学べてスキルアップができます。
多くのセラピストが利用している人気のサービスです!
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リハノメの評判・口コミは、こちらの記事で紹介しています。
自己研鑽で高めた人的資本の価値は、いずれ給料であったり形となって還元されてきます。
なので、理学療法士は負け組と言われないためには上記2点を意識していきましょう!
理学療法士は負け組じゃないと言える理由まとめ
本記事では、理学療法士は負け組じゃないと言える3つの理由について解説しました。
理学療法士はオワコンだとか将来性がないと言われ、“負け組”と揶揄されることがありますが、決してそんなことはなく素晴らしい職業です。
自信を持ってそう言える理由は以下の通りです。
これらの理由から理学療法士は、決して負け組ではないと言いきれます。
PTという仕事に自信と誇りを持って働こう!
今回は以上です。