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肩関節の関節包・靭帯の制限部位をリハビリで見分ける方法

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肩関節疾患のリハビリが難渋しやすい原因の一つとして、肩関節は自由度が高いために安定性に関わる組織が多く、制限因子を見分けるのが困難な事が挙げられます。

特に肩関節では筋肉の制限だけでなく、関節包や靭帯性の制限も多くみられます。

リガサポ

関わる組織が多すぎて厄介だよね

そのため肩関節のリハビリでは、筋肉以外にも関節包・靭帯がどの部分で制限されているかを見分けていくことが重要になります。

特に難渋しやすい結帯動作をはじめとした可動域の改善にはこの関節包・靭帯へのアプローチが欠かせません。

そんなわけで本記事では関節包・靭帯の制限部位の見分け方をお伝えしていきます。

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リガサポ
リハビリ科長&採用担当
経験年数15年越えの理学療法士。慢性期→総合病院→整形外科クリニックと2回の転職を経て、年収100万円以上アップに成功!現在は整形外科クリニックでリハビリ科長として勤務する傍ら、採用担当として人事にも従事。またPT・OTを対象にセミナーも開催。

関節包靭帯の機能解剖

まずは関節包靭帯の解剖をサクッと。

関節包の付着は近位が関節唇周囲、遠位が大・小結節周囲〜解剖頚となっています。

この関節包の一部が肥厚した部分が関節上腕靭帯と呼ばれています。

肩関節包・靭帯

教科書などではそれぞれ別々に記載されていることも多いですが、解剖学的には関節包と関節上腕靭帯は区別するのが難しく、一体となって機能しています。

そのため関節包と関節上腕靭帯を合わせて、「関節包靭帯」と呼ばれています。

この関節包靭帯は以下の4つの部位に分類されます。

関節包靭帯の分類
  • 上関節上腕靭帯 (SGHL):小結節の上方
  • 中関節上腕靭帯 (MGHL):小結節の内側
  • 前下関節上腕靭帯 (AIGHL):解剖頚の前下縁
  • 後下関節上腕靭帯 (PIGHL):解剖頚の後下縁

さらに関節包は腱板筋群に取り囲まれ、強固に連結しています。

そのため腱板の張力も安定化に寄与しています。

腱板が存在しない部位
・棘下筋–肩甲下筋間:腱板疎部と呼ばれる
・小円筋–肩甲下筋間:腋窩陥凹と呼ばれる

関節包靭帯の役割

関節包靭帯の主な役割は、生理的な弾性による静的安定化です。

また腱板深層の線維の張力も関節包の緊張を高めています。

肩関節ではこの他にも関節内圧が陰圧であることも、この静的安定化に関与しています。

関節包靭帯の中間位を知って、制限因子を見つけ出そう

どの部分で制限されているかを見分ける前提として、関節包靭帯の緊張が均一になる中間位を知ることが重要になります。

その位置から動かすことでどの部位が緩み、どの部位が伸張するかが分かり制限部位が見極めやすくなってきます。

関節包靭帯の中間位

関節包靭帯の緊張が均一になる中間位は、肩甲骨面での45°外転位です。

この関節包靭帯の緊張が均一になるポジションから、例えば内転 (下制)すると上方の関節包が伸張されますし、挙上・外転していくと下方の関節包靭帯が伸張されます。

関節肢位と制限因子
  • 中間位から挙上:下方関節包
  • 中間位から下制:上方関節包
  • 中間位から外旋 or 外転:前方関節包
  • 中間位置から内旋 or 水平内転:後方関節包
リガサポ

関節包靭帯の制限部位を見分ける基準とるので、必ず覚えておいて下さい

これが理解できてくると肩関節の第1肢位、第2肢位、第3肢位の意味合いが分かってくると思います!

肩甲骨面とは
スキャプラプレーン (scapular plane)とも呼ばれる。
解剖学的肢位で肩甲骨関節窩は約35°前方を向いており、この関節窩が向く面が肩甲骨面。
腱板筋の張力が均一になり、負担が少ない関節位置。

肩甲骨面

関節包の伸張性と上腕骨頭の偏位

関節包の各々の部分が硬くなると、上腕骨頭にはどの様な影響が出るか?

関節包の伸張性と骨頭偏位
  • 前方関節包の伸張性低下:骨頭の後方偏位
  • 後方関節包の伸張性低下:骨頭の前方偏位
  • 下方関節包の伸張性低下:骨頭の上方偏位

臨床的には、特に後方および下方の関節包の伸張性低下が起こりやすいです 。

関節包靭帯の制限部位を見分ける方法

ここでは関節包靭帯の制限部位の見つけ方について部位別に紹介していきます。

前上方関節包、上関節上腕靭帯 (SGHL )の評価

前上方関節包、上関節上腕靭帯の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩関節の第1肢位、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )
  • 評価方法:内外旋中間位から外旋
  • 判断基準:外旋45°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
棘上筋前部線維、肩甲下筋上部線維、烏口上腕靭帯、三角筋–大胸筋の短縮・攣縮

前方関節包、中関節上腕靭帯 (MGHL)の評価

前方関節包、中関節上腕靭帯の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩関節外転45°、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )
  • 評価方法:内外旋中間位から外旋
  • 判断基準:外旋70°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
肩甲下筋、大胸筋の短縮・攣縮

前下方関節包、前下関節上腕靭帯 (AIGHL)の評価

前下方関節包、前下関節上腕靭帯の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩関節の第2肢位、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )
  • 評価方法:内外旋中間位から外旋
  • 判断基準:外旋50°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
肩甲下筋下部線維の短縮・攣縮

後上方関節包の評価

後上方関節包の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩関節の第1肢位、内外旋中間位 (実際は前腕が体幹に接触しない様に軽度屈曲位)
  • 評価方法:内外旋中間位から内旋
  • 判断基準:内旋90°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
棘上筋後部線維、棘下筋横走線維の短縮・攣縮

後方関節包の評価

後方関節包の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩甲骨面での外転45°、内外旋中間位 (肩甲骨固定)
  • 評価方法:内外旋中間位から内旋
  • 判断基準:内旋70°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
棘下筋斜走線維の短縮・攣縮

後下方関節包、後下関節上腕靭帯の評価

後下方関節包、後下関節上腕靭帯の評価

見分け方

  • 開始肢位:肩関節の第3肢位、内外旋中間位 (肩甲骨固定)
  • 評価方法:内外旋中間位から内旋
  • 判断基準:内旋50°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

もちろんこの評価では関節包靭帯以外で制限がかかる場合もあります。

その他の因子は下記の通りです。

その他の制限因子
棘下筋斜走線維、小円筋の短縮・攣縮

肩関節のリハビリを学べるおすすめ書籍

肩関節に関する書籍は数多く出版されています。

中でもより臨床に即して、リハビリに活かせるのは赤羽根先生の「肩関節拘縮の評価と運動療法 改訂版」です。

肩関節の解剖・運動学から、病態の理解までしっかり学べる良書です。

リガサポ

写真・イラストも多く分かりやすいよ

また村木先生の「肩関節理学療法マネジメント−機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く」も、肩に関して詳しく書かれているのでおすすめです。

肩関節包靭帯の制限部位を見分ける方法まとめ

いかがでしたでしょうか?

肩関節疾患の可動域制限の因子は様々であり、しっかりと制限因子を見極めていくことが重要になります。

特に筋肉の要素だけを考えがちになりますが、関節包・靭帯の制限も考慮に入れてもらえればと思います。

リガサポ

臨床でも変化を実感できるよ

最後までお読み頂きありがとうございました!

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