近年、医療・介護の在宅化が進み、訪問リハビリのニーズが高まっており、それに伴い訪問リハビリを提供する事業所も増えています。
そんな訪問リハビリは、理学・作業療法士のなかで給料の高い職場として人気がある分野のひとつです。
在宅シフトの国の方針ともマッチし、今後も理学・作業療法士の需要が見込まれる分野と言えます。
ですが、一方で「訪問リハビリはきつい」というイメージがあり、興味はあっても働いていけるか不安に思う人も多いはず。
興味はあっても働いていけるか不安になりますよね
そこで本記事では、訪問リハビリの仕事内容やメリット・デメリットにも着目し、1日のスケジュールなども詳しく解説していきます。
訪問リハビリに興味のある人、転職を検討中の人に参考になる内容になっています。
田中 汐里
- 訪問看護ステーションで働く15年目PT
- 7歳と3歳の子育て中
- 現在6時間パートとして勤務中
- 慢性期病院、クリニックで勤務経験あり
訪問リハビリってどんな仕事?
訪問リハビリは、医師からリハビリが必要とされた利用者の自宅を訪問し、心身機能の維持・回復と日常生活の自立を目指したリハビリを提供します。
利用者が住み慣れた環境で生活を続けられるよう、退院後のリハビリだけでなく、予防的な観点からも在宅でのリハビリが注目されています。
近年、高齢化の進展と医療・介護の在宅シフトに伴い訪問リハビリの需要が増加し、事業所もここ10年で2,000件近く増加しています。
訪問リハビリ事業者の推移
厚労省 介護サービス事業所の状況
- 2013年は全国で3322件
- 2023年は全国で5214件
また高齢者への訪問リハビリでは、身体機能の向上に留まらず、生きがいを持つための精神的ケアや自己実現の支援も重視されています。
高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう支援する、高齢化社会に欠かせない重要な職種となっています。
訪問リハビリで働くのってきつい?
訪問リハビリには、確かに「きつい」「大変」という側面があるのも事実です。
自宅での限られた資源を活用しながらリハビリを行い、移動や事務作業なども多いため、時間管理やスケジュール調整が重要になります。
また、訪問先での突発的な事態にも、一人で対応しなければならないことがあるでしょう。
一方で、訪問リハビリには利用者の生活に直接関わり、その人らしい生活の実現をサポートできるというやりがいがあります。
以下に、訪問リハビリがきつい、大変と言われる主な理由をあげました。
それぞれ解説していきます。
基本1人で対応しないといけない
訪問リハビリの仕事は基本1人で行います。
そのため急なトラブルや患者の急変にも自分ひとりで対応しないといけないので、お世辞にも楽な職場とは言えず正直きついです。
訪問リハビリのセラピストには、リハビリの知識・技術だけでなく、内科などの他分野の知識やリスク管理のスキルも求められます。
利用者さんが倒れた時とかにも咄嗟に動けるスキルが必要だよ
時間に追われる
訪問リハビリはとにかく時間との戦いという側面もあります。
- 利用者のリハビリ
- 移動
- 担当者会議
- 家族や医療機関からの相談
上記のようにただリハビリするだけじゃなく、その他にも時間を取られることが多く、「常に時間を意識」しないといけない点もきつい、大変と感じる要因です。
1日の訪問件数が多いと、それだけでわずかな時間の遅れがスケジュール全体に影響してしましうので、時間のやりくりに追われてしまいます。
焦ってる時ほど、家族に呼び止められたりってのがあるんだよね笑
移動が大変
移動の大変さも、訪問リハビリがきついと言われる要因のひとつ。
移動手段は事業所によって異なりますが、利用者宅前に停められて小回りがきくバイクが自転車が多いですが、1日の移動距離にして10~20kmになることもザラ。
自転車で20km弱の移動は大変だよね
さらに夏は暑く冬は寒い上に、雨や雪が降ればさらに過酷に…。
台風の日も状況によっては出勤を余儀なくされるので、体力勝負の一面もありきついです。
利用者の相性、自宅の環境がさまざま
当たり前ですが、訪問リハビリは利用者の自宅に伺ってリハビリを提供します。
利用者さんとの相性はもちろんですが、自宅の清潔さや臭いなど環境面も利用者さんそれぞれで違います。
綺麗な家もあれば、汚い家も…。
そのため潔癖症の人や臭いに敏感な人は、ケースによってはきついと感じるかもしれません。
僕もタバコの臭いがキツい家は苦手だな…
コミュニケーションがより求めらる
訪問リハビリでは、病院以上に多くの人とのコミュニケーションが必要になります。
- 利用者
- 利用者の家族
- ケアマネージャー
- 他サービス事業所
- 医療機関
- 事業所内スタッフ
このように多くの人とコミニュケーションが必要なため、コミュニケーションが苦手な人にとっては、きついと感じることがあるかもしれません。
連携がうまくいくように調整する能力も必要だよ
きついだけじゃない!訪問リハビリの魅力
「きつい・大変」のイメージが強いですが、訪問リハビリにはそれ以上のメリット(良いところ)もあります。
それぞれ解説していきます。
給料が高い
訪問リハビリはきつく大変な分、給料が高いのが魅力です。
実際に訪問リハビリで働くPTには、一般的なPTの1.5〜3倍近く稼いでいる人もゴロゴロいます。
かなりの高給にビックリするね
訪問リハビリが稼げる理由は、主に下記2点が大きく関与しています。
- リハビリ1件あたりの報酬単価が高いこと
- インセンティブ制度(歩合制)がある
特にインセンティブと言われる歩合制が導入されているところが多く、頑張った分だけ給料も上積みされるのが大きな要因!
訪問リハビリが稼げる理由は、こちらの記事でさらにくわしく解説しています。
面倒な人間関係に悩みにくい
訪問リハビリは、仕事のほとんどの時間をほぼひとりで過ごします。
そのため病院なんかでよくある煩わしい人間関係のトラブルに巻き込まれることもなく、自分のペースで働くことができます。
無駄なストレスが溜まらないよ
ライフスタイルの変化に対応しやすい
訪問リハビリは、常勤だけでなくパート・アルバイトでも給料が高く、ライフスタイルの変化に合わせて働き方を変えることが可能です。
その理由は、訪問リハビリは件数に応じた報酬制だから。
そのため結婚・出産・子育てとライフスタイルの変化が大きい女性PTにもぴったりな分野といえます。
ライフスタイルの変化に合わせやすいのは嬉しいね
訪問リハビリが向いている人、そうじゃない人
訪問リハビリに向いている人は、「人とのコミュニケーションが好きで、急変などにもある程度ひとりで対応ができる人」です。
訪問リハビリでは、利用者やその家族、またケアマネージャーや医療機関など多くの人と関わり、連携を取りながら介入していく必要があります。
そのためコミュニケーションが好きな人じゃないときつく大変と感じやすいです。
また予期せぬトラブルや患者の急変なども基本ひとりで対応しないといけないので、リスク管理能力がある人に向いています。
上司や同僚のサポートだったり、経験を積むことで慣れていくので心配しなくてもOK
訪問リハビリの1日のスケジュール
ここでは、同僚や知人の現役訪問リハビリPTのスケジュールをいくつかご紹介します。
訪問リハビリの1日の流れの参考にしてください。
訪問看護ステーションのPTのケース
- 20代男性PT
- 移動手段は車
- フルタイム(9:00~18:00)
- 1日平均6,7件の訪問
1日のおおまかなスケジュールはこちら
- 9:00:出勤
- 9:15:訪問先へ出発
- 9:30:1件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 10:10:1件目終了、出発
- 10:30:2件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 11:30:2件目終了、出発
- 11:50:3件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 12:30:3件目の訪問終了、出発
- 12:40:車内で昼休み、記録
- 13:40:お昼休み終了、出発
- 13:50:4件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 14:30:4件目の訪問終了、出発
- 14:45:5件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 15:45:5件目の訪問終了、出発
- 16:00:6件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 16:40:6件目の訪問終了、出発
- 16:50:7件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 17:50:7件目の訪問リハビリ終了、事務所へ
- 18:00:事務所到着、記録記入
- 19:00:残業終了、帰宅
お昼休みは基本的に車の中が多いそう
病院所属PT (訪問専従)のケース
- 30代男性PT
- 移動手段は自転車
- フルタイム(8:30~17:30)
- 1日平均6件の訪問
1日のおおまかなスケジュールはこちら
- 8:15:出勤、ミーティングなど
- 8:30:訪問先へ出発
- 8:40:1件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 9:40:1件目終了、出発
- 9:50:2件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 10:30:2件目終了、出発
- 10:50:3件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 11:30:3件目の訪問終了、出発
- 12:00:病院へ帰院、記録、お昼休み
- 13:00:お昼休み終了、出発
- 13:10:4件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 13:50:4件目の訪問終了、出発
- 14:00:5件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 15:00:5件目の訪問終了、出発
- 15:15;6件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 16:15:6件目の訪問終了、出発
- 16:30:帰院、記録
- 17:30:終業
自転車での移動なので、体力勝負だとか
病院所属のPT (兼任)のケース
- 30代男性PT
- 移動手段は自転車
- フルタイム(8:30~17:30)
- 1日平均3,4件の訪問
1日のおおまかなスケジュールはこちら
- 8:15:出勤、ミーティングなど
- 8:30:院内のリハビリ
- 11:00:1件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 12:00:1件目終了、お昼休み
- 13:10:2件目の訪問リハビリ先へ到着(40分間)
- 13:50:2件目終了、出発
- 14:00:3件目の訪問リハビリ先へ到着(60分間)
- 15:00:3件目の訪問終了、帰院
- 15:15:病院へ到着、記録
- 16:00:院内リハビリ
- 17:00:記録やミーティングなど
- 17:30:終業
院内と訪問でのリハビリでメリハリがあるみたい
訪問リハビリはきつい分野ですが、その大変さは職場(事業所)によっても全然変わってきます。
優良な職場ほど、きつさ・大変さもマシだよ
そんな優良な求人を見逃さないために大事なコツは、いつでも求人情報が入ってくるようにしっかりと網を張っておくこと。
そのための方法は以下の3つ。
それぞれ解説していきます。
リアル・SNSで人との繋がりを作る
転職において「働きやすく給料の高い職場」にいける可能性が最も高いのは、知り合いからの紹介です。
HPや求人票だけでは分からない内部事情も知れますし、高い給料を提示されやすくもなります。
採用側も紹介だと安心できるから、採用率も上がるよ
また紹介でなくても、新たな求人情報を教えてもらえることもあるので、人との繋がりを作っておくと良いでしょう!
実際にTwitterなどのSNSで求人募集をかけている訪問リハビリもあります。
転職サイトを活用する
ひとりで訪問リハビリの求人をチェックしたり、人からの紹介を待っているだけでは良い求人を見つけるには限界があります。
その点、理学療法士向け転職サイトだと希望条件を伝えておけば、専属の担当者が条件に合う求人をどんどん紹介してくれるので取りこぼしがなく便利。
転職サイトは無料で使えますし、実際に転職しなくても求人情報をチェックするだけでも良いので、とりあえず登録しておいて損はないでしょう。
情報収集が目的で使う人も多いよ
訪問リハビリの求人なら「PTOT人材バンク」が間違いないです。
高年収で優良な求人を多く抱えているので、まずは登録だけでもしておきましょう!
\高収入の求人多数 /
※登録・利用にお金は一切かかりません
PTOT人材バンクの詳細は、こちらの記事で解説しています。
担当者に「インセンティブがある訪問リハを紹介してください!」みたいなお願いをするのもありだよ
個人で求人情報を定期的にチェックする
働きたい訪問リハビリがあるなら、求人が出ないか定期的にチェックしておきましょう。
またハローワーク求人も、意外な好条件の求人が出ることもあるので、忘れずチェックしておきましょう。
ちなみにハローワーク求人は、転職サイトからもチェック可能だよ
ハローワーク求人を扱う転職サイトは、先ほど紹介した「PTOT人材バンク」や「レバウェルリハビリ」が有名どころです。
まとめ:訪問リハビリはきついけど、メリットもたくさんある
本記事では、訪問リハビリがきつい・大変と言われる理由を紹介しました。
主に上記5つの理由から、訪問リハビリはきつい・大変と言われますが、それ以上に稼げたりライフスタイルの変化に合わせた働き方ができるなどメリットもたくさんあります。
訪問リハビリがきつい・大変と感じるかは人それぞれ!
興味があるなら、勇気を出して飛び込んでみるのも良いんじゃないでしょうか。
大変だけど、とてもやりがいのある分野だよ
今回は以上です。