作業療法とは(OT)

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作業療法(OT)とは

 作業療法(Occupational Therapy:OT)とは、作業訓練をとおし、食事・入浴・トイレなどの日常生活に欠かせない作業や、家事・仕事・趣味といったより高度な作業の習得、それら作業に必要な心身能力の改善・維持を行うリハビリ治療のことです。日常生活動作(ADL)は上肢(肩周り・腕・手)の機能が重要であることから、実際には作業療法の時間で上肢機能の訓練を重点的に行うことも多く、「手の訓練」などと理解されることも多いようです。

 作業療法の主な内容には、手芸や園芸などの作業を利用して機能・能力の改善や維持を目指す機能的作業療法、食事・入浴・トイレといった日常生活を送るうえで必要な基本的な生活活動(作業)の習得を目指す日常生活動作訓練(ADL訓練)、買物・調理・洗濯などさらに高度な生活活動の習得を目指す手段的日常生活動作訓練(IADL訓練)があります。

作業療法といわれると、もくもくと同じ作業を繰り返すとイメージするかもしれませんが、訓練に用いられる道具のサイズがより小さくなる、指先だけではなく手首や腕を使う課題に変更するというように、課題の難易度が上がったり、症状にあわせてアレンジが入るなどといった工夫がされ、訓練内容の詳細は多岐にわたります。

「理学療法士及び作業療法士法」による定義

昭和四十年六月二十九日に国会によって定められた「理学療法士及び作業療法士法」第2条では、「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせること」と定義されています。


1. 作業療法の対象となるケース 

 作業療法は、病気やケガ、加齢などによる心身の障害が原因で、日常生活や社会生活においてのあらゆる作業に、何らかの課題を抱える人が対象となります。
 作業療法の対象となる範囲は広く、食事に関することを例に取ってみると「物を食べる」といった基本的な動作だけでなく、「食事を準備する」(応用的)、「外食をする」(社会適応)といった高度なものも含まれます。
脳梗塞による障害と作業療法

 脳梗塞を発症した場合、急性期の頃から理学療法士とともに作業療法士による介入も始まります。基本的能力の改善、能力の応用、社会適応化というふうに、様子を見ながら治療が進められていきます。

 脳梗塞による障害のうち、麻痺や運動失調といった身体障害のほか、物事の認識・把握・理解・思考・判断・実践などがうまく行えなくなる高次脳機能障害など、様々な障害が作業療法の対象です。
 たとえば片麻痺のほか感覚障害もあるなど、脳梗塞の障害は併発することもあり、その場合は同じ作業であっても難易度に差が生まれます。また、人によってその組み合わせや障害の度合い、生活環境も異なることから、作業療法の具体的訓練内容は多岐にわたります。

脳梗塞のリハビリについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。



2. リハビリ治療の流れと作業療法における評価方法

 リハビリ治療を行うにあたっては、「評価」「プラン(計画)」「治療」「再評価」のプロセスが重要になってきます。

評価

対象者の体の状態、起きている症状・疾患などを把握し、抱えている問題点を見つけ出す

プラン

問題点を洗い出したら、その問題点が発生した原因を探る、そして原因改善のためにどのような治療が適切・有効なのか検討を重ね、具体的な治療プランを考える

治療

立てた計画をもとに実際の治療を行う
再評価

治療前と比べて対象者に変化があったか、治療前の評価と同じ評価を行う。

症状が改善されなかったり、新たな問題点が見つかったりしたときには、問題点や治療プランを再考し次の治療に向かう

 このサイクルを繰り返すことで、一度目のサイクルでは発見できなかった新たな問題点を見つけられたり、問題の再発見によってより効果的な治療プランを立てることができたりし、症状改善につながっていくのです。

作業療法の評価について

 作業療法においては、下記のような評価方法などを利用して、治療プランの方針決めや成果の確認を行います。

【1】機能評価

【1-1】上肢機能(肩周り、腕、手などの機能)
 上肢機能の評価方法には、簡易上肢機能検査(STEF)やボックス&ブロックテストなどがあります。

 簡易上肢機能検査(STEF)は、大・中・小のボールや木製の角材、四角形の布といった、なんらかの物体を握ったり移動させたり、ひっくり返したりすることによって、手指や腕などの動作の正確性や力の調整動作などを標準値と比較する評価方法です。

 ボックス&ブロックテストは、2等分された箱の片側に2.5cmの木のブロックを1分間で何個移動させられるかというテストで、上肢機能や手指の器用さを把握するための評価方法です。

【1-2】高次脳機能
 高次機能の評価方法には、コース立方体テストやMMSE(ミニメンタルステート検査)、三宅式記銘力検査、WAIS-Ⅲなどがあります。

 コース立方体テストは、赤や青、黄色、白に塗り分けられた立方体を組み合わせて、決められた模様を作るという知的機能を評価するテストです。
 テストは短時間で行うことができ、2問連続で失敗するとテストは終了します。

 MMSE(ミニメンタルステート検査)は、認知障害の度合いを把握するための検査です。
 時間・計算・記憶・言語理解など全11問の質問を行い、30点満点で採点します。
 検査を行う際は、質問の内容をアレンジしたり、正解やヒントを教えたりしてはいけません。

 三宅式記銘力検査は、検査対象者の記銘力を把握するために行う検査です。
 有関係対語(意味的関連の深い名刺)10対と無関係対語(意味的関連の希薄な名刺)10対で構成されており、はじめに10対の語を読み上げて記銘させた後、それらの対語を想起させて、その正答数・誤答数・回答時間から記銘力を診断します。

 WAIS-Ⅲは、成人を対象とした知能検査のことで、発達障害の方の検査でよく用いられます。
 4種類の能力のIQを検査し、検査対象者が「どんなことが得意」で「どんなことが苦手」なのかを把握します。
 WAIS-Ⅲは16歳以上の方が対象となり、16歳以下のお子さんにはWICS-ⅢやWISC-Ⅳを実施します。

【2】能力評価

【2-1】ADL評価
 ADL評価には、機能的自立度評価法(FIM)やバーセルインデックス(BI)といった種類があります。

 
機能的自立度評価法(FIM)は、すでに行えている日常生活動作を評価するもので、「食べ物を口に運べるか」「洗顔ができるか」「自力で移動できるか」といった評価項目から、対象者の自立度や介助量を把握します。
 評価項目は全部で18あり、得点(1~7点)をつけて7段階で評価します。

 
バーセルインデックス(BI)は、日常生活動作の自立可能レベルを評価するものです。
 評価項目は全部で10あり、自立度に合わせて項目ごとに「0点」「5点」「10点」「15点」の最大4段階で評価します。
 機能的自立評価法(FIM)よりも点数が大まかですが、100点満点形式でわかりやすく、短時間で簡便に採点できます。

【2-2】IADL評価
 生活環境や生活水準、目標などは人によってそれぞれ異なるため、普遍的に用いられるIADLの評価方法はありません。
 しかし、能力の再獲得を数値などでわかりやすく表現するということは、「成果を感じられる」「目標にできる」などメリットが大きく、リハビリの現場では適宜用いられています。


 
複数の項目がまとまったものでいうと、LaetonのIADL評価尺度という方法があります。評価項目は、買い物や食事の準備、洗濯や服薬など全8項目あり、検査対象者がその動作を「できる」か「できない」かで採点を行います。女性は全8項目に回答しますが、男性は買い物・移動手段・服薬・電話使用・財産管理の5項目のみ回答します。

3. 作業療法と理学療法の違い 

 理学療法も作業療法も、その目的は生体機能・能力(ひいては生活に必要な能力)の回復・維持にありますが、理学療法では起き上がる・立つ・歩くといった基本的動作のための身体機能(運動能力)の回復・向上に焦点があてられます。そして作業療法では、理学療法で改善された運動機能も使って、食事・入浴・外出などの生活動作を問題なくこなすための作業練習を行うことでの能力取得に焦点があてられます。

 ただし、理学療法と作業療法はこのように区別はされるものの、リハビリプランを検討するには横断的な視野も必要になるため、「このような症状だから理学療法」「この症状には作業療法」と単純に切り分けすることはありません。

機能的作業療法 

 機能的作業療法とは、なんらかの作業をとおして、日常生活などの身体活動に必要な筋力や関節可動域の改善を目指す訓練のことです。
 たとえば、筋力低下や麻痺などにより、ぎこちなくなった手の動きなどを、工芸、手芸、陶芸、描画、ゲーム、コンピュータ操作などの作業訓練を通して改善させるといったような内容です。
 一般の方にはなじみがありませんが、上記以外にも、穴がたくさんついた板に木釘を差し込む「ペグボード」や、傾斜のある板の上で握ったものを上下に動かす「サンディングボード」なども、機能的作業療法でよく利用されるものとしてあげられます。

日常生活動作訓練(ADL訓練)

 日常生活動作(Activity of Daily Living:ADL)とは、食事・トイレ・入浴など、日常生活を送るうえで必要不可欠な動作のことです。

日常生活動作(ADL)

・食事

・排泄

・更衣

・入浴

・移動 …など

 日常生活動作訓練(ADL訓練)とは、その名のとおり、それら日常生活動作を訓練するといった内容です。

 具体的には、下記のようなものがあげられます。

・福祉機器や自助具を使って食事の動作向上を目指す食事動作訓練
・様々な場所で衣類の着脱を行う更衣動作訓練
・杖、歩行器、車椅子を使っての移動訓練
・歯ブラシを使って歯磨きをしたり水で顔を洗うなどの整容動作訓練
・お風呂場まで移動する、浴槽に入るといった入浴動作訓練

日常生活動作(ADL)について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

手段的日常生活動作訓練(IADL訓練)

 手段的日常生活動作訓練(IADL訓練)とは、食事の支度、洋服を洗濯する、買物をする、携帯電話を使うなど、日常生活動作(ADL)よりも高度な手段的日常動作(IADL)の作業訓練のことです。

手段的日常生活動作(IADL)

・買物、調理

・掃除

・洗濯

・交通機関の利用

・携帯電話の使用 …など


 訓練内容は、電話をかけるために電話帳を調べてダイアル番号を打ち込む訓練や、調理するために包丁を扱う訓練、洋服を着るために洋服を洗濯機の中に入れる、洗濯物を干す訓練など、その種類が多くなることはもちろん、障害の度合いや補助具を利用するかなどによっても違いがあるため、訓練内容は多岐にわたります。

監修ドクターのまとめ

 作業療法では生活のなかの各種の動作に必要な心身の機能の回復や代償手段の獲得などを目指しています。現代社会において障害がなければ日常生活の多くの動作では上肢(腕・手)を使うことが多いため、一般的には「手の訓練」と認識されることも多いと思います。ですが実際の生活においては、歩行が自立しているか、判断やコミュニケーションの能力は十分か、など様々な機能や能力によって上肢の使い方も変わってきますから、広い視点を持ったアプローチが必要になります。

  • 脳梗塞においては、麻痺や失調が生じた上肢や高次脳機能が主たるターゲットになる。
  •  全身の体力や高次脳機能などに問題があれば上肢機能が回復しても生活の質の向上には直結しないことがある。生活を変えるには何が重要かの評価をその都度行うことが重要。 
  •  重症例では麻痺が生じた上肢の拘縮予防や、意識状態の改善が最初の課題となる。
  •  回復期を経て在宅に至るようなケースでは、退院後に訪問リハビリなどでIADL領域の残った課題の解決に取り組むこともある。
 

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