脳梗塞の予防(リスク因子対策)

目次

脳梗塞の予防

 脳梗塞は時に命に関わり、また、命をとりとめても障害が残り後遺症となることもある重大な疾患です。厚生労働省の調査によると、脳梗塞を含む脳血管疾患は、死亡理由・介助が必要になる理由ともに例年上位となっています。
 脳梗塞は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)といった近年増加傾向にある生活習慣病の影響が大きく、高齢者が発症した場合は重症化しやすい傾向もあるため、今後の医療・介護問題に深く関わってくるとして、各方面から脳梗塞の予防に関する呼びかけが行われています。

 脳梗塞の予防は、脳梗塞を誘発するリスク(危険因子)を減らすことが重要になります。
 高血圧、高血糖、高コレステロールなどにならないよう普段から食事や運動などの生活習慣を意識することや、たばこをやめる、アルコールは控えめにするといった生活改善が脳梗塞の予防につながります。

●脳梗塞を誘発する代表的なリスク(危険因子)

  • 高血圧症
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • メタボリックシンドローム
  • 心房細動
  • 大量飲酒
  • 喫煙
脳梗塞の原因について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

脳梗塞のリスク因子への対策

 脳梗塞を誘発するリスク(危険因子)への対策について、それぞれどのような予防・治療が行われるかまとめて紹介いたします。
 

1. 高血圧症への対策

 高血圧症とは、血圧値が基準より高い高血圧状態が続く疾患です。

 お酒をたくさん飲む、塩分の多い偏った食生活、運動不足といった生活習慣の他、加齢や肥満、遺伝的な体質、薬剤の影響など、血圧が高くなる要因は様々あります。血圧が高い状態が改善されずに慢性化してしまうと、高血圧症を引き起こします。

 高血圧症の予防としては、減塩や全体の栄養バランスを考慮した食生活の見直し、適正体重への減量、毎日30分以上の有酸素運動、お酒やタバコを控えるなどの生活習慣の改善があげられます。

※減塩について:1日の塩分摂取量の目安は、高血圧症の人は6g未満、高血圧症ではない人でも男性8g未満・女性7g未満となっています。

 高齢者や遺伝的な体質により高血圧症になりやすい方も、同様の対策を行うことで、予防や維持が期待できます。

 すでに高血圧症を抱える場合には、薬による治療がこれに加わります。

 

2. 糖尿病への対策

 糖尿病とは、血糖値が基準より高い高血糖状態が続く疾患です。

 高血糖は、インスリンという血糖値を下げるホルモンがうまく作用されないことにより起こります。

 糖尿病は高血圧症と同じく生活習慣病として知られていますが、高血糖の状態になる要因は、実際には生活習慣以外に、妊娠、遺伝的な体質、薬剤の影響、先天的名身体異常、感染症など多岐にわたります。

 糖尿病の予防としては、偏りのない食生活を目指すことや、食後の血糖値上昇を抑制するために1日20g以上の食物繊維を食事の最初に食べること・食事はよく噛むこと、朝食をきちんととり、就寝前に夜食を食べることなどは控えること、その他に適正体重への減量、毎日あるいは週3~5回計150分以上の有酸素運動、お酒やタバコを控えるなどの生活習慣の改善があげられます。

※偏りのない食生活について:2013年「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」より、性別・年齢・肥満度など様々な観点から適切な摂取カロリーを求め、そのうち炭水化物は50~60%、たんぱく質は20%以下、残りを脂質とするのが望ましいとしてあげられました。

 すでに糖尿病を抱える場合には、血糖値コントロールのために、体の状態にあわせた生活習慣改善の指導やインスリン注射などの薬による治療が行われます。

 

3. 脂質異常症への対策

 脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が基準値におさまらない状態が続く疾患です。以前は高脂血症と呼ばれていました。

 脂質異常症(高脂血症)は、高血圧症や糖尿病と並ぶ生活習慣病のひとつです。

 お酒をたくさん飲む、脂分が多い偏りのある食生活、運動不足、肥満、遺伝的・先天的な体質などにより高コレステロールや高中性脂肪といった状態を引き起こし、それが慢性化することにより脂質異常症につながります。

 脂質異常症の予防としては、肉の脂身・乳製品・卵黄の摂取を抑え魚類・大豆製品を摂取する、野菜・果物・未精製穀類・海藻を積極的に摂取する、塩分を抑える、過食を抑える、適正体重への減量、毎日30分以上の有酸素運動、お酒やタバコを控える、などの生活習慣の改善があげられます。

 すでに脂質異常症を抱えている場合には、これに加えて薬による治療が行われます。

 

4. メタボリックシンドロームへの対策

 メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に加え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常などが合わさり、脳梗塞を含む脳卒中や心臓病といった動脈硬化性疾患のリスクが高くなる病態のことです。

 メタボリックシンドロームは内臓肥満に加えて、これまでに紹介した高血圧症、糖尿病、脂質異常症に近しい水準に陥っている状態で、これらと同様の対策を行うことが有効です。

5. 心房細動への対策

 心房細動とは、その名のとおり心房が痙攣のように細かく脈打つ不整脈のことです。心電図などの検査によって診断されます。
 心房細動は、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、弁膜症、加齢などとの関連が深いと言われています。特に高い血圧や心臓弁の異常により左心房とよばれる部位への負担が増えることで心臓の構造変化が促され発症につながると考えられています。したがって、心房細動の予防としては生活習慣の改善や適正体重への減量など、これまでの対策と同様の内容になります。
 すでに心房細動を抱えている場合で、自覚症状があるなど心房細動による直接的な問題が大きいケースでは心房細動を抑える治療が検討され、具体的には、薬、ペースメーカーや手術、電気的除細動などがあげられます。
 また、心房細動による脳梗塞の直接的な予防として、血のかたまり(血栓)の発生を防ぐため血液を「サラサラ」にする抗凝固療法があります。


6. 大量飲酒、喫煙への対策

 大量飲酒・喫煙は、これまで紹介した生活習慣病のリスクが高まる原因になる他、脳梗塞を誘発するリスク因子としてもあげられています。
 すでにリスク因子にあげられている疾患を抱えている場合には、すぐに節酒・禁煙するよう生活習慣を見直しする必要がありますし、そうでない場合にも、体への悪影響を考えお酒とたばこを控えるよう意識していくことは重要です。
 アルコール依存症、ニコチン依存症を抱えている、あるいはその予備軍である場合には、依存症治療を行い対策します。

 また、受動喫煙という「喫煙者が吐き出した煙を吸うこと」も喫煙に近い悪影響を与えます。たばこを吸っていないのに、その他の人と比較してリスクが高い状態になるため、受動喫煙を避けるよう立ち回ることも対策といえます。

生活習慣の改善について

 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、心房細動に関しては、生活習慣の改善により予防や維持が期待できます。

◎食生活の見直し

 栄養バランスの良い食生活を目指すこと、食べ過ぎないこと、疾患を抱えている場合には食材やメニューについて悪化につながるようなものを避けるといったことがあげられます。
 具体的には、高血圧症の場合には塩分の多い料理を避ける、塩やしょうゆなどの調味料の量を減らしたり、調味料や食材を減塩タイプのものに切り替えるなどの工夫があります。
脳梗塞の食事予防について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

◎適度な運動

 移動手段を徒歩や自転車など体を動かす手段に切り替える、スポーツやアウトドアな趣味や体操やトレーニングといった習慣を取り入れる、適正体重を超えている場合には、減量を目的にカロリー計算を行いながら運動を計画するといったことがあげられます。

◎睡眠の改善

 睡眠時間が少ない・まとまった睡眠をとれないことなどによる睡眠不足や、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害は、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病と深い関わりがあります。
 そのため、毎日決まった睡眠時間を確保したり、質の良い睡眠がとれるよう環境を整えたり、睡眠障害を抱える場合には医師に相談し、治療や医療器具などによる対策を検討したりすることなども重要になります。

◎労働による負荷の改善

 長時間労働などによるストレスは疲労状態をまねきます。そこに食事の偏りや運動不足、睡眠不足などがかさなることで、血圧や血糖値の上昇といった様々な不調が生まれても改善しづらくなり、生活習慣病や、脳卒中を含む循環器疾患発症につながることがあります。
 そのため、労働時間や環境の見直しによってストレス軽減をはかることなどが重要となります。

脳梗塞の早期発見

 脳梗塞の初期症状の中には、病院に行くほどではないのではと考えてしまいがちな症状や、自覚が難しい症状、無症状など、脳梗塞の症状の現れ方は様々で、受診・検査までに時間がかかることがあります。
 しかし、脳梗塞の早期発見や迅速な対処は、その後の経過に影響します。適切な行動が「進行の予防」という効果を持つのです。
 そのため、脳梗塞やTIAが疑われる症状を見過ごさないようFASTチェック(脳梗塞セルフチェック)を覚えることや、体の状態を調べる定期検査などの対策が重要です。

◎脳梗塞の前兆

 脳梗塞の前兆として、数分~数十分だけ、片方の手足が動かしづらくなる、ろれつがまわらなくなる、温度を感じにくくなる…といった症状が現れることがあります。これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれるものです。
 「すぐにおさまったから」と病院に行かない人もいますが、実は、TIAを発症した人のうち、90日以内に脳卒中が起こる危険度は15~20%に及びます。
 たった数分の違和感でも、すぐに受診するよう心がけましょう。
脳梗塞の前兆について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
 

◎脳梗塞のチェック方法

脳梗塞が疑われる症状として代表的な3つの症状「顔・腕・言葉の異常」の頭文字からつくられた「FASTチェック」というものがあります。
 これを覚えておくと、とっさのときの判断の助けになるのでおすすめです。

「F」……FACE(フェイス・顔)→顔面麻痺(顔の片側がさがる・ゆがみがある)
「A」……ARM(アーム・腕)→腕の麻痺(片腕に力が入らない)
「S」……SPEECH(スピーチ・話す)→言語障害(言葉が出てこない、ろれつがまわらない)
「T」……TIME(タイム・時間)→発症時間(いつからそうなったか)
「FAST」……すばやく行動! 救急車を呼びましょう
脳梗塞のチェック方法について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

監修ドクターのまとめ

脳梗塞は発作的に起きるように見えますが、背後では血管などの変化がじわじわと起きているので、そこをできるだけ進ませないようにすることが予防につながります。わかっているリスク因子について、地道に遠ざけていくことです。

ただ「君子危うきに近寄らず」といいますが、「君子」とまで称されるのは大変です。アタマではわかっては居るけれど、なかなか難しいという方も多いでしょう。それでも、行動変容の理論からすると、知らないより知っている方が「やってみようかな」と思えて、何かしらのきっかけから行動が起き、適切なサポートがあれば続きやすいと考えられています。

  • 高血圧など健康診断で指摘される生活習慣病はだいたい脳梗塞のリスク因子。心臓など他の臓器の病気にも繋がります。
  • 正しい知識を持つことが予防の第一歩。
  • 最初から完璧を期さず、できることから始める。
  • 可能なら数値目標を決めて、行動計画をたてると良い。
  • 家族や職場などのサポートが生活習慣改善の助けになることがある。

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