脳梗塞の原因とリスク因子

脳梗塞の原因とリスク因子

目次

脳梗塞の原因

 大半の脳梗塞は、血のかたまり(血栓)動脈硬化などによって、脳血管が詰まることが原因で引き起こされます。

 血のかたまり(血栓)は、血液がどろどろの状態だとできやすく、その原因は生活習慣によるものや心房細動といった病気によるものなど様々です。

 動脈硬化とは血管の壁が分厚く硬くなった状態のことで、通常より血液の通り道が細くなってしまいます。動脈硬化が進むと、血栓が詰まりやすい危険な状態になったり、あるいは血液の通り道自体が塞がってしまったりします。

●監修ドクターのコメント●  

 「原因」「リスク」という言葉は様々なところ使われていますが、いずれも時間軸でいえば物事より前を指すことから、使い分けが難しくなり、適切ではない表現になったり、混乱をまねく複雑な表現になったりすることがあります。ページ下部にて詳細をまとめています。

脳梗塞の種類別の原因

 脳梗塞は、どのように脳梗塞が引き起こされ、どの血管が詰まったのたかによって、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、その他の脳梗塞に分けることができます。したがって脳梗塞のタイプによって具体的な原因は異なります。

1. ラクナ梗塞の原因

 ラクナ梗塞を発症する主な原因は高血圧と考えられています。
 太い血管から枝分かれする穿通枝のような細い血管の場合、血管の内側から高い圧力がかかり続けると、血管の壁が傷つき、分厚くなって動脈硬化を引き起こします。このような動脈硬化を「細動脈硬化」と呼びます。動脈「硬化」とは言うものの固く強くなるわけではなく、血管は脆く、血栓などがより詰まりやすくなります。
脳梗塞の原因_ラクナ梗塞の原因_高血圧によるダメージ_血管が詰まるイメージ
 

2. アテローム血栓性脳梗塞の原因

 アテローム血栓性脳梗塞は「アテローム硬化」を背景に、脳に血を届ける血管の中に血のかたまり(血栓)ができて、脳への血流が途絶えてしまうことで起きます。
脳梗塞の原因_アテローム血栓性脳梗塞の原因_コレステロール物質であるリポ蛋白が血管にとりこまれるイメージ
 アテローム硬化とは「動脈硬化」の一種で、比較的太い血管に起きるとされる現象です。血管の内膜(血流に接する内側)が何かの原因で傷つくと、そこに集まった細胞がコレステロール物質(正確には「リポ蛋白」)を取り組み、それらが蓄積することで内膜が分厚くなります(肥厚)。このコレステロール物質がドロドロしたお粥のようであることから、アテローム硬化は「粥状硬化(じゅくじょうこうか)」とも呼ばれます。
 この状態が進めば血管の内部空間が狭まり、先にある臓器への血流が不足してきます。さらに、アテローム硬化で分厚くなった部分が傷ついて破れると、出血をとめるために働く血小板が集まり、血栓ができることもあります。
 血流が遮断され、先の臓器への血流が止まってしまうと細胞の損傷につながります。その臓器が脳であれば「アテローム血栓性梗塞」となります。これが、脳ではなく心臓であれば心筋梗塞と呼ばれる状態に陥ります。


3. 心原性脳梗塞の原因

 心原性脳梗塞の主な原因は、不整脈のひとつである心房細動です。
 『脳卒中データバンク2015』によると、心原性脳梗塞患者のうち、心房細動との合併頻度は72.8%になります。
 心房細動は心臓が痙攣のように細かく脈打つ不整脈です。これにより心房内の血液がよどみ、血のかたまり(血栓)ができやすい状態になります。
 心原性脳梗塞は、心臓でできた血栓が、血液の流れにのって脳まで運ばれ、脳血管を塞ぐことで引き起こされます。
脳梗塞の原因_心原性脳梗塞の原因_心房細動により血栓ができるイメージ

その他、脳梗塞の原因

 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞と比べて少数ですが、この3つのタイプ以外の脳梗塞も存在します。また、3つのタイプに分類されるものであっても、前述とは違う原因・メカニズムによって発症することもあります。
 その中で代表的なものをいくつか紹介いたします。

◎トルソー症候群

 トルソー症候群とは、がんによって血液が固まりやすい状態となったことが原因で脳卒中(脳梗塞を含む)を引き起こす病態のことです。
 脳卒中を発症した悪性腫瘍患者のうち、脳梗塞の原因としてもっとも多いのは、非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)によるもので、NBTEをきっかけに心臓でできた血のかたまり(血栓)が脳血管で詰まり脳梗塞を引き起こす心原性脳梗塞などがあげられます。

◎血液凝固異常によるもの

 血液凝固異常とは、その名のとおり血液を固める機能に異常が発生している状態をさし、脳梗塞においては、血液凝固の異常によって血栓ができやすい状態になることが脳梗塞の原因につながります。
 血液凝固異常症の原因は、血小板の異常や赤血球の異常、疾患、内服薬の影響など様々あります。

◎動脈解離によるもの

 血管の壁には3層の膜があります。内膜、中膜、外膜です。
 動脈解離とは、動脈(血管)の内膜が破れることで、膜と膜の間に血液が流れてしまう状態のことです。動脈解離により血液のめぐりが悪くなることで、脳梗塞やくも膜下出血などが引き起こされます。
 動脈解離による脳梗塞は40~50代に多く、麻痺や感覚障害といった脳梗塞によくある症状の他、めまいや頭痛なども多く発症するという特徴があります。

◎外傷によるもの

 事故によるケガなどの外傷によって、脳梗塞が引き起こされることがあります。具体例として外傷による動脈解離などがあげられます。外傷を負った直後だけでなく、数週間後に脳梗塞を発症することもあります。
 

◎先天的身体異常によるもの

 先天的な身体構造の異常、血管の異常、血液の異常などによって脳梗塞が引き起こされることがあります。具体例として血液凝固異常による脳梗塞などがあげられます。自覚がなく、脳梗塞を発症して初めて分かるというケースもあります。

脳梗塞のリスク因子

 脳梗塞を誘発するリスクとして、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動、肥満、喫煙・飲酒など様々なものが挙げられますが、いずれの脳梗塞も「高血圧症」の保有率が高く、「脳梗塞を誘発する最大のリスク(危険因子)は高血圧」ともいえます。
脳梗塞のリスク因子_原因_誘因_高血圧症の保有確率
参考:小林祥泰・編集『脳卒中データバンク2015』中山書店,2015年,P18-19

 以降の項目では、代表的なリスク因子の詳細と、脳梗塞にどう影響するのかについてまとめて紹介します。

1. 高血圧症

 高血圧症とは、血圧値が基準より高い高血圧状態が続く疾患です。

●高血圧の診断基準

  • 診察室血圧値 140/90mmHg 以上
  • 家庭血圧値 135/85mmHg 以上

参考:日本高血圧学会・編集 『高血圧治療ガイドライン2014』ライフサイエンス出版,2014年,P20 [HP]

 塩分の摂りすぎ、自律神経やホルモンの異常、運動不足、飲酒・喫煙など様々な要因が、血液量が増加したり、細い血管への血のめぐりが悪くなったり、血液に粘り気が出たり(血のかたまりである血栓が生成されやすい状態)といった高血圧を引き起こす原因へとつながります。

 高血圧になると、血管は圧力によって常に伸ばされているような状態になり、壁は徐々に分厚く硬くなっていきます。また、血管が傷ついてコレステロール物質などが溜まることでも壁が変化していきます。これを動脈硬化といいます。

 動脈硬化が進むと、血液の通り道が細くなり、やがて血管が閉塞したり、血のかたまり(血栓)によって塞がったりといった事態につながります。これが脳や脳に至る直前の頸部の血管で起こることで脳梗塞が引き起こされます。

 脳梗塞には様々なリスク因子がありますが、どのタイプの脳梗塞も高血圧症の保有率が高く、高血圧は脳梗塞最大のリスクといえます。

 

2. 糖尿病

 糖尿病とは、血糖値が基準より高い高血糖状態が続く疾患のことです。

●糖尿病型の診断基準

  • 血糖値(空腹時)126mg/dl以上
  • 血糖値(常時)200mg/dl以上
  • ブドウ糖水溶液摂取後の血糖値(75gOGTT 2時間)200mg/dl以上
  • ヘモグロビンA1c 6.5%以上

参考:日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2016-2017年 [HP]

 高血糖は、インスリンという血糖値を下げるホルモンがうまく作用されないことにより起こります。

 糖尿病は、すい臓の細胞に障害が出てインスリンが作れなくなる1型糖尿病、生活習慣などによりインスリンが少なくなったり、働きが悪くなったりする2型糖尿病、妊娠による糖尿病、その他の糖尿病などに分かれますが、多くは2型糖尿病です。

 高血糖の状態が続くと、「リポ蛋白」と呼ばれるコレステロール物質が変化し、血管の壁の内側にたまって、動脈硬化を促進します。これが脳で起こり、血栓などにより脳血管が塞がってしまうと、脳梗塞が引き起こされます。

 

3. 脂質異常症

 脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が基準値におさまらない状態が続く疾患のことで、以前は高脂血症と呼ばれていました。

●脂質異常症(高脂血症)※空腹時採血

  • 高LDLコレステロール血症 140mg/gl以上
  • 境界域高LDLコレステロール血症 120~139mg/dl
  • 低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
  • 中性脂肪血症(高トリグリセリド血症) 150mg/dl以上
  • 高non-HDLコレステロール血症 170mg/dl以上
  • 境界域高non-HDLコレステロール血症 150~169mg/dl

参考:日本動脈硬化学会(編), 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017, p.26 [HP]

 血液中の脂質のバランスが偏ることによって、コレステロール物質(リポ蛋白)が血管の壁に蓄積される粥状硬化と呼ばれる動脈硬化の促進につながります。

 また、脂質異常症は、糖尿病を併発する可能性も高く、糖尿病と脂質異常症の両方を保有していることで様々な疾患のリスクが高まります。

 

4. メタボリックシンドローム

 メタボリックシンドロームとは、以下の条件に当てはまる状態のことを指します。このような状態では内臓肥満に加え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常などが合わさり、脳卒中や心臓病といった動脈硬化性疾患のリスクが高くなると考えられています。

●メタボリックシンドローム診断基準

  • 腹囲 男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪蓄積の指標)
  • 下記3項目のうち、2項目以上にあてはまる
  1. 中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)150mg/dl以上 かつ/または 低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
  2. 高血圧 130/85mmHg以上
  3. 空腹時高血糖 110mg/dl以上

参考:日本内科学会雑誌,第94巻,第4号 2005年 [HP]

 内臓脂肪の肥満があると、内臓脂肪からたくさんの脂質が放出されます。それが中性脂肪の増加などにつながり動脈硬化を促進します。

 また、メタボリックシンドロームを放置すると糖尿病や脂質異常症(高脂血症)や高血圧症へ進行しやすく、それらの疾患が合わさるとさらに動脈硬化の進行に影響します。

 

5. 心房細動

 心房細動とは、その名のとおり心房が痙攣のように細かく脈打つ不整脈のことです。心電図などの検査によって診断されます。
 心房細動により、心房が細かに震えることで心房内の血液によどみが生まれ、血のかたまり(血栓)ができやすい状態となります。心臓でつくられたこの血栓が、血液の流れにのって脳まで運ばれて脳血管を詰まらせると心原性脳梗塞となります。
 

6. 大量飲酒

 大量の飲酒(エタノール450g/週以上)をしている場合には、お酒をあまり飲まない人と比べて、脳卒中全体の発症率が68%増加することがわかっています。
 エタノール450gとは、500mlのビール缶であれば約22.5本分、ワインであれば約6.5本分に相当する量です。毎日、500mlのビール缶で約3.2本以上飲むと、1週間のエタノール摂取量約450gになる計算です。
 また、これより少なければ良いというわけではなく、飲酒の量が多いほど、高血圧につながりやすく、様々な疾患のリスクも高まります。
 

7. 喫煙

 男性で1日20本以上喫煙する場合に脳梗塞を誘発するリスク(危険因子)となることが研究により判明しています。リスクは喫煙本数が多いほど高まる傾向にあり、受動喫煙(喫煙者が吐き出したたばこの煙を吸うこと)も脳卒中のリスクになるという報告があります。

脳梗塞のリスク因子と予防の関係

 脳梗塞の予防は、脳梗塞を誘発するリスク(危険因子)を減らしていくことなどがあげられます。
 したがって、高血圧、高血糖、高コレステロール、肥満などにならないよう普段から食事や運動などの生活習慣を意識することや、たばこをやめる、アルコールは控えめにするといった生活改善が脳梗塞の予防につながります。
 すでに高血圧、高血糖、肥満などを抱えている場合には、血圧管理、血糖値管理、体重管理なども重要になります。
 また、心房細動は心電図から診断ができることがあります。脳梗塞になりやすいといわれるような状態になってないか定期的に健康診断を受けてチェックし、予防に役立てましょう。
脳梗塞の予防について、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
 

監修ドクターのまとめ

 脳梗塞は「卒中(病気が突然起きること)」の一つとされているように、突然発症するように捉えている方もいるかもしれませんが、多くの場合見えないところで血管などの変化が慢性的に進んでいることを背景にしています。引き金が引かれた瞬間に対して「これ」といった直接原因は指摘できなくても、「そもそも危なかった」という下地の形成については、血圧、血糖、喫煙など多くの要素の関与が示されています。そうした「リスク因子」を遠ざけることが、地道な予防といえるでしょう。

  • 血圧が慢性的に高いことの影響は大きい。
  • メタボリックシンドロームに該当するような肥満は他のリスクにもつながりやすい。多くの場合、背景には改善可能な生活習慣がある。
  • 血圧、体重などは日々自身で確認できるので、生活習慣改善の目安にしやすい。
●監修ドクターのコメント●

この記事における「原因」と「リスク」の扱いについて

 「原因」「リスク」という言葉は病気以外の文脈でも普通に使われる一般的な単語ですよね。いずれの語も時間軸で言えば前に来るものを指しますが、使い分けをされずに似たような意味合いで使用されることもあるように思います。あまり適切な言葉の使い方ではない、というケースも有るように思います。

「高血圧は脳梗塞の原因である」

 表現として「△」

  • たとえば高血圧→細動脈硬化→ラクナ梗塞、といったストーリーは考えられますから、一般論として「原因たりえる」くらいなら誤りとはいえません。但し他の要因も考えられますし、高い血圧そのものが血管をつまらせるというわけではないです。
  • 一方で、全く血圧異常が無い方でも心原性梗塞などを発症することは想定できます。少なくとも特定のケースで、「今回は高血圧は原因と言えない」ということはあり得ます。
  • 医療保険などで必要になる診断書には、多くの場合主病名のほかその原因についても記載を求める欄がありますが、上記のような理由から「脳梗塞」の原因を「高血圧」と書くことは私はしません。

 

「高血圧は脳梗塞のリスク因子である」

 表現として「○」

  •  統計的に、できるだけ他の条件を均したと仮定しても高血圧の有無で脳梗塞に至る割合が変わる、ということを示すデータは多々あります。
  • 「リスクを増す」というような言い方があるように、「リスク」という語には数的な割合、可能性の概念が含まれます。
  • リスク因子である、とは直接的な原因となること以外にも、間接的、あるいは付加的に働く事項についても使われます。たとえば、「男性であることは脳卒中のリスク因子である」という表現は妥当です(男性でなくても発症しますが、男性の方が発症しやすいということです)。

 この記事でも、わかりやすさを重視して「原因」という表現を用いたりしていますが、「(上流にある)しくみ」というような意味合いだったり、「リスク因子」という意味合いだったりするように幅があります。明らかな誤りは除き、上記の△くらいの用法は許容していますが、専門的な表現に慣れている方は、適宜読み替えていただければと思います。

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