脳梗塞の治療

目次

様々な観点から検討される脳梗塞の治療法

 脳梗塞の治療法は、どのタイプの脳梗塞で原因は何か、病態はどうか、どんな症状か、合併症はあるか、リスク因子は持っているかなど、その他にも様々な点を確認しながら検討されます。
 脳梗塞は再発のリスクが高い病気です。脳梗塞を発症した当事者は、脳の変化が落ち着いた後も、脳梗塞を発症したことがない人に比べて脳梗塞が起きやすい状態であることが多いため、発症の原因が明らかであれば再発予防を目的とした治療が続けられます。
脳梗塞の治療
 

脳梗塞の種類と治療法

 脳梗塞は、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、その他の脳梗塞とにタイプが分けられます。それぞれは梗塞が発症した場所以外に、発症にいたるメカニズムにも違いがあり、治療法検討において欠かせない情報です。

 たとえばラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞などの脳梗塞で、動脈硬化が影響しているとみられれば、血小板の働きをおさえることで動脈内に血栓ができないようにする抗血小板療法を検討する……といった具合に、脳梗塞の種類によって治療法は変わっていくのです。

脳梗塞の種類と原因 薬による主な治療法

「ラクナ梗塞」、「アテローム血栓性脳梗塞」

動脈硬化による血管のつまりで起こる脳梗塞。

「抗血小板療法」

血小板の働きをおさえ、動脈内で血栓ができないようにします。

「心原性脳梗塞」

心房細動などの不整脈が原因で、心臓でできた血栓が血液と一緒に脳まで運ばれていき、脳の血管がつまっておこる脳梗塞。

「抗凝固療法」

血液を固まりにくくさせ、心臓や静脈内で血栓ができないようにします。

 

病態・症状と治療法

 同じ種類の脳梗塞でも、発生した場所や梗塞の大きさなどによって脳細胞損傷の度合いが異なり、病態と症状が違ってきます。また、発症からどれくらい時間が経っているかによっても病態は変化し、都度、適切な治療法が検討されます。

主な病態・症状 検討される主な治療法

脳血管に血栓ができている

(発症して間もない

「血栓溶解療法」発症後早期のみ可

血栓を溶かす薬を投与し、血栓を除去します。
使用される薬により投与できるタイミングが異なります。
t-PA:薬剤により、発症後4.5ないし6時間以内。
ウロキナーゼ:発症後5日以内
その他にも様々な制約あり。静脈から薬を投与して動脈の血栓を溶かすので、「経静脈血栓溶解療法」「動脈内血栓溶解療法」などとも呼称されます。

「血栓回収療法」発症後8時間以内
医療機器で血栓を取り除きます。

血栓ができやすい状態の血液になっている

「抗血栓療法」

動脈内で血栓ができて血の流れが止まったり、他の場所から流れてきて血管が詰まったりを減らすため、血液の固まる仕組みを抑制する治療。

※「抗血小板療法」「抗凝固療法」がこれにあたります。

脳浮腫(脳の腫れ)による脳幹圧迫が疑われる

「開頭外減圧療法」発症から48時間以内

頭蓋骨の一部をはずすことで圧力を逃がし、脳への圧迫を減らす手術。

「脳浮腫治療」

薬の点滴投与により、脳浮腫を軽減します。

脳の機能に悪影響を与える物質の増加が疑われる

「脳保護療法」

薬により脳機能に悪影響を与える物質の増加を防ぐことで、脳を保護します。

※この他にも様々な病態に対し、様々な治療法が検討されます。

※治療の時間制限については2018年初頭時点の情報です。

 

年齢・病歴と治療法

 患者の年齢(高齢など)や、過去に発症した病気や行われた手術などが原因で、薬が投与できない(あるいは推奨ではない)場合などがあり、それによっても治療法は変わります。

治療法 治療適応外にあたるケース

経静脈血栓溶解療法(t-PA治療)

  • 過去に頭蓋内出血を起こした
  • 3ヶ月以内に脳梗塞を発症した
  • 21日以内に消化管、あるいは尿路出血した     ……など

 ※一例です。

 

リスク因子の種類と治療法

 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動など、脳梗塞にはさまざまなリスク因子が存在しますが、当然治療法はそれぞれ異なります。

リスク因子 主な治療法

高血圧症

血圧測定、服薬、食事、運動など

糖尿病 血糖測定、服薬、食事、運動など
脂質異常症 服薬、食事、運動など
心房細動 服薬、手術など
飲酒・喫煙 お酒を控える、禁煙するなどの生活習慣の改善
肥満 体重測定、食事、運動など

 

合併症・体質と治療法

 人によっては骨折、大動脈解離、肺炎、悪性腫瘍、下肢静脈血栓症などの合併症を患っていることがあり、その場合、検討しておいたほうがいい治療法や、あるいは用いえない治療法があります。

 同様に、薬品に対する過敏症などの体質にも注意が払われます。過敏症の場合、反応の現れ方は様々ですが、イメージされやすい発熱の他に、肺機能や腎機能などへ影響することもあり油断できません。

治療法の再検討が必要となる例

出血性脳梗塞

(脳梗塞の部位に出血を伴う状態)

抗凝固療法中の場合、一時中止することが多い。

腎機能障害

薬の使用に制約が生じることあり、種類や分量などを適宜調節する。

※薬によっては腎機能不良の方向けの分量が定められており、調整可能になっている。

脱水

輸液(点滴での水分や電解質の補充)を検討する。

※脳浮腫や心不全など、水分が増えることで悪化するものもあるため配慮が必要。

肺炎 誤嚥によるものであることも多く、食事の開始を遅らせたり嚥下しやすい食形態にしたりといった配慮がなされる。

※一例です。

脳梗塞の急性期と慢性期

 脳梗塞の全身管理の必要性病態は、大きく急性期と慢性期に分けられます。

 

脳梗塞急性期の治療

 脳梗塞を発症してから全身状態の安定を最も重視すべき時期を脳梗塞の急性期と呼び、発症直後から約2週間~2ヶ月までを指すことが多いです。

 急性期の目的は救命、ならびに日常生活への影響が最小限にとどまるように治療を行うことです。

 

 具体的には、脳・脳血管に対する内科治療では主に「血液のかたまりを溶かす薬(血栓溶解療法)」「脳を保護する薬(脳保護療法)」「脳のむくみを抑える薬(脳浮腫治療)」「血液がかたまるのを抑える薬(抗凝固療法・抗血小板療法)」を使い、脳細胞の実体や活動への影響をコントロールします。これらは生命維持に関わる機能への影響を最小限に留める目的があるとともに、手足がうまく動かせない、うまく話せないなどの神経症状をなるべくおさえ、日常生活への影響を小さくする狙いもあります。

 また、呼吸や循環などに影響が出ているような重症例では集中治療室で呼吸、血圧や心拍に直接的に働きかける全身管理が行われます。「気管切開処置」が行われたり気管挿管や人工呼吸器が使用されるケースもあります。意識がありつつも状況理解に問題があるときには治療が安全に行われるように、一時的に身体の不適切な動きを抑える対応(拘束具の使用やミトンの装着など)が行われることもあります。

 

 投薬治療については発症直後については基本的に点滴で行われ、その後内服薬に変更していく場合が多いです。中には手術(外科的治療)を行うこともあります。

 

脳梗塞慢性期の治療

 病態が安定し、治療を続けながら慎重に様子をみる時期を脳梗塞の慢性期と呼びます。状態の悪化や再発を防ぐことを目的に治療が行われます。再発予防は生涯必要なことが多く、治療の必要性という観点で慢性期を定義する場合は急性期以降のすべてを指すことになります。

 急性期と同じく、「血液がかたまるのを抑える薬(抗凝固療法・抗血小板療法)」を用いたり、手術を検討することもあります。他には、リスク因子対策として服薬や生活習慣の改善を行うこともあります。

脳梗塞発症後に行われるリハビリ

 脳梗塞の症状には麻痺や言語障害などがあり、日常生活やコミュニケーションに影響する場合があります。症状の程度は差があり、人によっては残存することもありますが、適切なリハビリを行うことで機能の回復が見込めます。

 大まかに、下にまとめたように段階に応じた目的を意識したリハビリを行います。リハビリというとセラピストと行う訓練をイメージする方が多いかもしれませんが、生活に関わる全ての前向きなアプローチを纏めた概念と考えることをお勧めしています。

<3つに分けられるリハビリ期間>

急性           

廃用症候群など二次的機能障害の予防が重要な目的になります。また、全身状態が許せば、早期からの機能回復訓練が有効とも考えられています。

回復期

全身状態が安定した後、機能回復を集中的にはかります。経過を見ながら退院後の状況を想定して環境の調整を行い、より制約の少ない快適な日常生活をすごせるようにする目的があります。

生活期

回復期の成果を維持しつつ、日常生活の質向上を目指す目的があります。ゆっくりと機能回復が見られる場合もあります。

 

監修ドクターのまとめ

 まずは命あってのリハビリです。医学・医療が進歩したといえ、脳梗塞は命にかかわることもしばしばです。実際の事例では各個の状況に応じた対応が必要ですので、医師や病院スタッフの説明をよく聞くようにしてください。

  • 脳への手当て、循環・呼吸への対処、リスク因子への対策、合併症への対処、リハビリなどが治療に含まれる。
  • 生命の危機を脱しても治療が終わるわけではない。リスクへの配慮は継続的に行われることが望ましい。
  • リハビリは治療の一環として早期から行うことが望ましい。内容は全身状態や症状による。

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