脳梗塞とは

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脳梗塞とは

 脳梗塞とは脳の血管がつまる病気のことです。

 血管がつまると血液の流れは止まってしまいます。血液には酸素や栄養を運ぶ役割がありますから、脳の血管がつまって血液が流れなくなった先の脳細胞は酸欠(酸素欠乏)や栄養不足の状態に陥ります。この状態が長く続いてしまうと、脳細胞は損傷を受けます。

 脳は物事を記憶したり考えたりすることはもちろん、立つ・座るなどの体の動きを命令したりもする大事な機関です。脳の細胞が損傷を受けてしまうと、手足が動かなくなったり(運動麻痺)、言葉が出なくなったり(言語障害)といったさまざまな障害の要因となります。

 日本における脳梗塞・脳卒中を含む脳血管疾患の総患者数は117万9千人(平成26年度 患者調査より)に及び、日本の人口と比較すると、およそ100人に1人が患者ということになります。

 医療技術の進化などにより脳梗塞の急性期死亡率は年々下がってきていますが、その一方で、日常生活に介助を要する人のうち、脳梗塞・脳卒中を含める脳血管疾患が原因という人が約2割ということもわかっています。

脳梗塞と脳卒中の違い

 脳卒中とは、脳の血管がつまったり、破れたりするいくつかの病気をまとめた呼び名です。脳梗塞はその脳卒中の1タイプとなります。

 脳卒中は脳梗塞を含め大きく3つのタイプに分かれます。

  • 脳梗塞……脳の血管がつまって起こる
  • 脳出血……脳の血管が破れて出血する
  • くも膜下出血……脳血管のコブ(脳動脈瘤)が突然破裂し、くも膜下腔という場所に出血する

 厚生労働省の発表によると、脳卒中などの脳血管疾患は男女ともに全死因のうち4位(平成27年の1年間の数)で、その内訳を見てみると、脳梗塞がその6割程度と考えられており、もっとも多いそうです。
 また、介護が必要となる原因としても約2割が脳卒中によるものであると、脳梗塞・脳卒中の社会的な影響の大きさは甚大です。
 急速に進む高齢化社会や、糖尿病などの生活習慣病患者の増加といった近年の状況から、脳卒中を発症する方は今後も増えていくと考えられています。

■脳血管障害とは
 脳梗塞や脳卒中について調べていると脳血管障害という言葉もよく見かけると思います。
 脳血管障害とは、その名のとおり脳の血管に問題があるさまざまな病気をまとめた呼び名です。この中には脳梗塞や他のタイプの脳卒中もすべて含まれます。

脳梗塞の原因

 脳梗塞は脳の血管がつまることで起こりますが、その血管がつまる原因の多くは脳血栓症脳塞栓症の2つのタイプに分けられます。

 血栓症とは、脳の血管が細くなり、つまってしまう状態のことです。原因としてはテレビでもよく耳にする動脈硬化などが挙げられます。
 動脈硬化とは、コレステロールなどが血管の壁にたまることで、血管自体が徐々にぶ厚く硬くなった状態のことです。これが原因で血液の通り道が細くなり、やがて血管がつまってしまうという問題が起こるのです。

 脳塞栓症とは、異物が血管を流れて脳の血管につまる状態のことです。主な原因としては、不整脈のひとつである心房細動(心房が痙攣するように震えている状態)によって心臓内で作られる血のかたまりが脳血管に流れていくことが挙げられます。

 また、脳梗塞の発症を誘発するリスク要因としては、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動、肥満、喫煙、飲酒などがあげられます。

脳梗塞の種類

 血管のつまり方や、つまった血管の太さによって、脳梗塞は次の3つのタイプとそれ以外の脳梗塞に分かれます。

ラクナ梗塞

 脳の太い血管から枝分かれする糸のように細い血管がつまって起こる脳梗塞です。高血圧などが原因としてあげられ、手足が動かしづらくなる運動麻痺や、ろれつがまわらなくなるといった、さまざまな症状が現れます。

アテローム血栓性脳梗塞

 細い血管がつまるラクナ梗塞に対し、太い血管がつまる脳梗塞です。コレステロールの蓄積などによる動脈硬化(アテローム硬化)が原因で血管が狭まり、やがて血栓により血管がつまってしまって起こります。
 ラクナ梗塞と同じく、手足が動かしづらくなる運動麻痺や、ろれつがまわらなくなるといった、さまざまな症状が起こりますが、脳が障害される範囲がより広く、障害が重いケースも目立ちます。

心原性脳梗塞

 心臓でできた血のかたまり(血栓)が血液と一緒に脳まで運ばれていき、脳の血管を詰まらせてしまう脳梗塞です。原因としてもっとも多いのは、不整脈のひとつ、心房が痙攣のように震える心房細動といわれています。
 心原性脳梗塞には、突然発症する、太い血管がつまって広い範囲に影響が出ることも多いといった特徴があります。

脳梗塞の予防

 脳梗塞の予防は、脳梗塞を誘発するリスク(危険因子)を減らしていくことなどがあげられます。
 脳梗塞を誘発するリスクとは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動、肥満、喫煙・飲酒などが挙げられます。
 したがって、高血圧、高血糖、高コレステロールなどにならないよう普段から食事や運動などの生活習慣を意識することや、たばこをやめる、アルコールは控えめにするといった生活改善が脳梗塞の予防につながります。
 また、心房細動は心電図から診断ができることがあります。
 脳梗塞になりやすいといわれるような状態になってないか定期的に健康診断を受けてチェックするのも大事です。

服薬による、ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞の予防方法

 抗血小板薬を服用し、発症を予防します。抗血小板薬とは血小板の働きをおさえる薬です。動脈内で血のかたまり(血栓)ができないようにし、悪化や再発を防ぐのが目的です。

服薬による、心原性脳梗塞の予防方法

 抗凝固薬を服用し、発症を予防します。抗凝固薬とは血液を固まりにくくさせる薬です。心臓や静脈内で血のかたまり(血栓)ができないようにし、悪化や再発を防ぐのが目的です。

脳梗塞の前兆・初期症状

 脳梗塞の前兆として代表的なものが一過性脳虚血発作です。略称ではTIAと呼ばれます。脳梗塞が疑われる症状が数分~数十分(長くて1日)だけ起こります。

脳梗塞が疑われる症状例

 脳梗塞を発症すると突然倒れてしまうイメージもありますが、それは症状の一部に過ぎません。脳がダメージを受けた場所によってさまざまな症状が現れます。

  • 手足から力が抜ける
  • 片方の手足がしびれる
  • 足がもつれてしまう
  • ろれつがまわらない
  • 言葉がとっさに出てこない
  • 他人の言葉が理解できない
  • ものが見えにくい
  • 突然倒れる
  ※同時にいくつかの症状が出ることもあります。

 すぐに治まったからと、病院には行かず放置する人もいますが、一過性脳虚血発作(TIA)はその後脳梗塞を発症する可能性があります。
 数ヶ月後・数年後に脳梗塞になる人もいれば、中には数分後・数時間後に脳梗塞が起こり急速に重症化してしまうケースもあります。
 ですからTIAと考えられる場合もさらなる精密検査や薬物治療、病院での経過観察が推奨されることが多いのです。

脳梗塞を見過ごさない「FAST」チェック

 FASTチェックとは脳梗塞が疑われる症状を簡単に表す標語です。
 これを覚えておくと、とっさのときの判断の助けになるのでおすすめです。

「F」……FACE(フェイス・顔)→顔面麻痺(顔の片側がさがる・ゆがみがある)
「A」……ARM(アーム・腕)→腕の麻痺(片腕に力が入らない)
「S」……SPEECH(スピーチ・話す)→言語障害(言葉が出てこない、ろれつがまわらない)
「T」……TIME(タイム・時間)→発症時間(いつからそうなったか)

 脳梗塞は時に命に関わることがあり、また、一命を取りとめても障害が残る可能性があります。
 早期に治療することが、救命やその後の障害の緩和・改善に影響するので、脳梗塞が疑われる発作が起こったらすぐに救急車を呼び、病院で調べてもらいましょう。

脳梗塞発症時の対処

 もし脳梗塞が疑われる発作を起こしたら、すぐに救急車を呼び、できるだけ正確に症状を救急隊員に伝え、病院へ搬送してもらいましょう。脳梗塞は早期の治療が重要になります。もしものときにそなえ、対処方法を覚えておきましょう。

自分自身が発作を起こした場合

 意識がある場合でも安心はできません。すぐに意識がなくなる可能性もありますし、自分自身では救急車を呼べないレベルまで重症化することもあります。また、歩いたり動いたりすることで脳への血流が悪くなり、重症化に繋がる可能性もあります。動けるつもりでいても麻痺のために転倒して骨折などが追加で起きることもあります。まして、症状が軽いからといって、自身で運転して病院に向かうなどしてはいけません。  

  1. 周囲の人に助けてもらう(救急車を呼んでもらいます)
  2. 意識があってもその場ですぐに横になり安静にする  

 

周囲の人が発作を起こした場合

 近くにいる人が脳梗塞が疑われる発作を起こしたら、すぐに駆けつけ助けましょう。

  1.  救急車を呼ぶ
  2. 救急車を待っている間は安全で落ち着ける場所に患者を移動させる(患者を歩かせない。毛布などを担架代わりにして移動させる)
  3. 発作を起こしたときの状況と症状を救急隊員に伝える

<発症者の意識がない場合>

 呼んだり軽くゆすっても反応がなければ、窒息を防ぐために気道を確保しなければいけません。 呼吸がしやすいよう気道を確保するようにしましょう。(肩の下にタオルなどを入れる)

脳梗塞の検査(診断方法)

 脳梗塞はどのような検査をとおして診断がされるのかをご紹介します。
 まず、脳梗塞の検査には2つのステップがあります。
 

 1つ目は脳梗塞かどうかを調べる検査です。

 脳卒中なのかそれ以外の疾患ではないかの検査、そして、脳卒中だとしても脳梗塞なのか脳出血やくも膜下出血ではないのかの検査をします。
 

<脳卒中を疑われる患者>

  • 問診(病状の詳細や病歴聴取など)
  • 診察
  • 一般臨床検査(血液検査、動脈血ガス分析、心電図、胸部X線など)
  • 頭部CTやMRI

  →診断:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、それ以外の疾患

 

 2つ目はどのタイプの脳梗塞なのかを調べる検査です。

 脳梗塞といってもラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞などいくつかの種類に分かれ、治療も異なりますので、どれに該当するのか検査をします。必ずしもすべてが緊急で行われるわけではありません。

<脳梗塞と診断された患者>

  • 脳血管系の検査
  • 心臓の検査
  • 脳の局所血流量の検査
  • 血液の検査

  →診断:ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、それ以外の脳梗塞

脳梗塞の急性期とは

 脳梗塞を発症してからの治療は、急性期、回復期、生活期(維持期)と呼ばれる3つの期間で行われます。まずは急性期から説明します。

 脳梗塞を発症してから全身状態の安定を最も重視すべき時期を脳梗塞の急性期と呼び、発症後約2週間~2ヶ月までを指すことが多いです。
 急性期の目的は救命、ならびに日常生活への影響が最小限にとどまるよう治療・リハビリを行うことです。
 具体的には、内科治療では主に「血液のかたまりを溶かす薬(血栓溶解療法)」「脳を保護する薬(脳保護療法)」「脳のむくみを抑える薬(脳浮腫治療)」「血液がかたまるのを抑える薬(抗凝固療法・抗血小板療法)」を使い、脳細胞の実体や活動への影響をコントロールし、手足がうまく動かせない、うまく話せないなどの神経症状をなるべくおさえ、日常生活への影響が最小限にとどまるよう努力します。中には手術(外科的治療)を行うこともあります。

 急性期でもリハビリは重要です。まず廃用症候群の予防や軽減を目的としたベッド上のストレッチが行われます。関節可動域(ROM)訓練などと表現されることもあります。

 また、状態が許せば能動的な訓練として、立つ・座る・車椅子に移動するなどの離床訓練、食事や入浴といった日常生活に必要な動きが行えるようにするADL訓練、患者の症状によって摂食・嚥下訓練機能回復訓練なども行います。
 急性期の場合、脳のむくみがとれる段階であったりすることから、適切なリハビリを行うことで、麻痺などの症状の改善が得られやすくなると考えられています。
■廃用症候群とは
 寝たきりの時間が長すぎると、体力や筋力が著しく低下したり、骨がもろくなったりなど、身体にさまざまな悪影響が出てきます。これを廃用症候群といいます。

脳梗塞の回復期とは

 病態が落ち着き、リハビリに集中することで特に成果が得られやすいとされる時期を脳梗塞の回復期と呼びます。
 回復期の長さは、軽症で回復が早ければ短くなり、重症などでゆっくり回復が続くケースでは長くなりますが、およそ発症から3ヶ月~6ヶ月までに相当します。
 回復期の目的は、患者の退院後の生活ができるだけ制約の少ない快適なものになるように、機能回復と環境調整とをすすめていくことです。
 多くの場合は自宅退院が希望にあがるため、自宅退院に向けたリハビリを行うと言い変えてもいいかもしれません。

 急性期の退院時点で障害が残っており自宅での退院が困難な場合には、回復期リハビリテーション病棟に入院するのが一般的で、回復期リハビリテーション病棟(※)の退院までを回復期と呼ぶ場合もあります。ただし、当事者・家族の希望、地域の医療機関の都合などから自宅などへ退院し、リハビリテーション施設へ通所しながら回復期の治療やリハビリテーションを行うこともあります。
※回復期リハビリテーション病棟での入院期間は、厚生労働省によって疾患や重症度に応じて定められています。

 回復期の具体的な治療については、患者の症状によって内容が大きく変わりますが、一般的には急性期でも行ったリハビリテーション(ROM訓練、離床訓練、ADL訓練、機能回復訓練、摂食・嚥下訓練など)を引き続き様子を見ながらすすめます。
 回復期の後は、自宅や地域の介護施設などで生活をしていく段階(生活期)に入るので、そのときの患者それぞれの状況を想定した訓練を行っていきます。残存しそうな障害を予測し、生活に不便が生じないように家の段差を減らす、手すりを取り付けるなどの環境改善も重要なポイントです。

脳梗塞の生活期(維持期)とは

 脳梗塞の生活期(維持期)とは、回復期リハビリテーション病棟から退院した後、リハビリ成果を維持し、環境に適応して生活できる状態を継続していく期間のことです。回復期までのリハビリはこの段階を目指した準備段階のもので、「生活に戻る・取り戻す」というリハビリの本番はこの段階であると言えます。

 具体的には自宅や施設で生活しながら定期的な診察を受けて治療を継続、能力面では訓練施設に通所、あるいはスタッフの自宅訪問などのかたちで機能回復訓練などを継続します。
 生活全体がリハビリであり、努力によってこの期間でもゆっくりと機能が回復していくこともあります。逆に病気や障害に対する認識不足や介助者の不在など社会的な原因でリハビリ要素の薄い生活サイクルになってしまうと、一度回復した心身の機能が衰えてしまうこともあります。人間誰しも老化はありえますし、いろいろな事情で本来望ましい工夫や努力が難しく、能力低下が避けられない場合もありますが、そのような場合でも変化に応じた対処や予めの予測などが期待されます。
 再発を防止するために栄養指導を受けたりなど、生活習慣の継続的な見直しや改善もリハビリの一部といえます。
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脳梗塞についての基本知識

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