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【体験談】脳梗塞による後遺症を抱えながらの復職


Aさん(45歳女性)

 IT 企業にお勤めのAさんは、昇進して管理職となった矢先の45歳の時に、脳梗塞を発症。右半身に麻痺が残り、病院でのリハビリ開始当初は、車椅子でしか移動できず、利き手である右手は棒のようにまったく力が入らない状態になりました。


復職までの道のり


「『仕事に戻りたい』、『ゴルフに行きたい』、この2つは、最初から思っていました。
あるお客様のプロジェクトを、途中で抜けてしまったことも気になっていて」


 Aさんにとって復職は、発症直後からずっと願い続けていたことでした。

 そのため、半年間の入院を終えてすぐに、復職後の通勤を想定して、あえて自宅から離れた職場近くのリハビリ施設を選び、頻度も週2日から開始し、最終的には週6日にまで増やしました。

 リハビリ施設への通所にあえて混雑列車に乗ったり、帰りにショッピングしたりなど、毎日の通勤や長時間の外出に耐えられるかを、徐々に負荷を上げて試していきました。

 このように復職の準備を計画的に進める一方で、Aさんは自分が仕事をできる状態であるかの判断を慎重に行いました。


「夫にも『私はそろそろ(復職)できると思っているのだけど、どう思う?』と聞きました。あるときは、『僕はまだ心配だ。中途半端な状態で焦って復職して失敗するより、じっくりリハビリした方がいい。今の状態で通勤ラッシュ時の人混みに耐えられると思う?本当にできるか考えてみて』と、どんどん仕事に集中していってしまう私の性格も考慮した意見を言ってくれました」


 リハビリの合間に、Aさんは会社の復職サポート制度も活用して、復職準備も行いました。

 発症から約2年、民間のリハビリ施設に通い始めて約1年半、Aさんは無事に復職することができました。

「職場に復帰した初日も、思ったよりは高揚感も緊張もなくて、“あ、どうも”、という感じでした。発症からのことを思えば、当たり前ではないはずですが、自分がそこにいるのは自然なことでした」

 復職初日はそんなふうに自然体ですごせたそうです。




Aさんの発症から復職までの流れ

  • 45歳、脳梗塞(進行性BAD型)発症。 
  • 急性期病院(1ヶ月間)、回復期病院(5ヶ月間)での治療とリハビリ(右半身に麻痺がありました)を経て、 自宅へ戻る。障害等級2級認定。
  • 発症から7ヶ月後、職場近くの民間のリハビリ施設に通い始める。(1年半、週5日の頻度)
  • 発症から約2年後、時短勤務での復職。
  • 発症から約2年4ヶ月後、フルタイム勤務を開始予定。


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会社とのコミュニケーション


「退院して自宅に戻って2か月ほど経ったころから、月に1回、上司と会社外でランチを食べながら、いろんな話をしました。自分の病気のことだけではなく、仕事の状況を聞くなどしていました。上司は時折、同僚も連れてきてくれました」


 休職者に対する支援制度や復職に向けたサポート制度は企業によって様々ですが、制度の有無にかかわらず、会社との定期的なコミュニケーションを図り「回復傾向と復職意志を示していくこと」と「安全に通勤、勤務できることを証明すること」は、復職を目指す上で非常に重要なポイントになります。


 Aさんの場合、会社側からの復職の最低条件は「ひとりで安全に通勤できること」「就労時間(時短勤務6時間、フルタイム8時間など)が毎日守れること  」の2つで、以下のステップが用意されていました。


①(休職時から)月1回の上司との面談

②(復職時期を具体的に希望した段階で)

  • 医師の診断書(就業可能の診断書)を提出
  • 2週間の生活記録を提出 
  • 産業医との面談を経て、復職日を決定

③(復職後)

  • 産業医によるフォロー面談
  • 時短勤務(最長3か月間)
  • フルタイム勤務


復職後の働き方


「利き手である右手に麻痺が出てしまったので、どこまで戻るかという不安はありました。でも、“一度復職して、やってみてダメだったら、その時に考えよう”と、思っていました」


 そうした覚悟で復職をしたAさん。実際にはどうだったのでしょうか。


「復職初日に電話をとったのですが、麻痺のために受話器を持ちながらメモをとることができず “うわっ”となりましたね。同僚への伝言も付箋にうまく書けず、結局パソコンでメモを打ちました。メールを書くにも、パワーポイントの操作にも時間がかかります。今までのやり方がうまくできないので、ストレスを感じます。特に、私はパワーポイントを使って、自分の考えをまとめて、指示も出していたので、それに代わるコミュニケーションやチーム作りが課題です」


 休職による2年のブランクもあり、どうすれば自分のパフォーマンスを最大限に引き出せるのかを判断できるようになるには、復職から2か月ほどかかったそうです。
 

「2年間のブランクに溜まった2万件のメールを整理しながら、チームの様子を観察していると、自分が入るべき仕事のエリアも見えてきました。ただ、今は生産性が大幅に落ちてしまっている上に時短勤務のため、“手を出すとかえって迷惑をかけてしまう”という可能性を考えて、自制することも多くあります」


 そのような中で、何でも自分ですべてをこなす“プレイヤータイプ”だったAさんは、チーム全体の仕事を把握して“コントロールとフォローをするスタイル”の働き方に変えていこうとしているそうです。

 復職を果たしたAさんですが、心に決めていることがあります。

 それは「仕事とリハビリの両立」です。

 フルタイム勤務が始まった後も、フレックス制度を活用して、週に4日間、さらなる改善を求めてリハビリ施設へ通所し続けるそうです。


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Aさんの復職の例はいかがでしたか。

 後遺症の度合いや、会社の制度、業務内容は人により異なるため、誰もがAさんのように復職できるというわけではありませんが、参考になりそうな点は多くありました。

  • 上司や同僚の理解を得るために復職前からコミュニケーションをとる
  • 復職の条件を明確にする(リハビリや生活環境の工夫による対処が可能になります)
  • 一人で悩まず、誰かに相談しながら復職のタイミングをはかる
  • 「できない」で終わらせずに、代替手段を検討する
  • 数か月先、あるいは数年先を見据えて、リハビリを継続する


 また、会社に戻ることをゴールと考えず、後遺症を抱える中でも成長を続けようという前向きな彼女の姿勢に、障害による制約をはねのけるようなパワーを感じ、励まされた方もいるのではないでしょうか。


 脳梗塞による後遺症を抱えながらも、復職にいたるケースは他にもあります。

 気になる方は、ぜひこちらの記事をお読みください。


【体験談】30代で脳梗塞になった私(全8回)第1回 脳梗塞発症から目覚めるまで>>



監修ドクターのコメント

 この記事で紹介されているエピソードでは、障害者手帳二級を取得していることから麻痺による機能障害は決して軽くない水準であったと思われますが、退院時点で外出が行えるなど、能力レベルでは比較的高い水準の活動が行える方であったと思われます(外出はIADLの範疇ですからADLについてもほぼ自立と考えられます)。加えて、今後についてを自分なりに考え関係者に連絡を取るなど、高次脳機能の面でも生活水準以上であったと言えそうです。そんな方でも、復職には2年を要したとのこと。決して簡単な道のりではなかったでしょう。

 産業医でもある私の目からは、このエピソードでは職場の協力も手厚く得られていたように感じました。障害がなくとも、長く職場から離れていることは不安材料になります。事前に社内の方々とコミュニケーションを取れていたというのは、その点で有利に働いたかと思います。またなんとか自立しているとしても、生活の諸々が決して思い通りではない状態ならば、本来仕事を続けること自体が大きな負担です。そこについても段階的な復職・業務復帰ができたというのは、周囲とのすり合わせがあってこそだと思われます。




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